90年代アンチヒーロー流行に釘を刺したキングダム・カムの話

【ヴェノム誌制作陣によるキングダム・カム読書会】


ヴェノム誌作家ドニー・ケイツ氏「ダークホース社出版バズキルにマーク・ウェイドが帯推薦文くれて以来の仲で師匠。煮詰まったら電話するし、本社総合会議で今後の粗筋発表した後は『お前あほか。これがそういう理由だ』と叱ってくれる。業界の誰にとっても父親みたいな存在の人。

当時僕は27歳。雑誌でフラッシュの仮装してたマークの見て顔知ってたからにコミックス店で自己紹介後、今度本が出るので大好きな作家に一言推薦文(日本だと帯)頂けたらとても有難いですと伝えたら快諾してメアドくれて。PDF送ったら超多忙なのに一時間でくれた!

お宅にお邪魔した時別宅書庫も見せて貰い、はしゃがないようにしてた。でも片隅の段ボール箱塗れのソファでキングダム・カム書いたと聞いてせっせと荷物どかし、そこに座って写真撮った。雑誌写真のマークのポーズ真似たら『お前滅茶苦茶おたくだな!』とバレた」

ヴェノム誌画家ライアン・ステグマン「俺達はキングダム・カムに影響を受けた第二世代」

ヴェノム誌作家ドニー・ケイツ氏「キングダム・カム自体幾つかの先例がなければ生まれなかった」

ヴェノム誌画家ライアン・ステグマン「ヒーローを現実世界の状況に置いた」

ヴェノム誌作家ドニー・ケイツ氏「最初にそうした脱構築を始めたのはミラクルマン。政治的、社会的主張に溢れたウォッチメン程の文化的影響は与えてなくとも。アラン・ムーアはヒーローを高みから引き下ろした。60年代マーベルがヒーローに人間味を与えたのとはとても違う形だった。

キングダム・カムは聖書の引用も特徴だけど、96年出版なのが重要で。マーベルとDCの二強時代に92年イメージ社ができコミックス界に激震が走る。当時の世相(90年アンチヒーロー流行)として正統派ヒーローを馬鹿にし全てが過激化する傾向だった。

マークをよく知るから言うけど、そんな新興勢力に対するマーク・ウェイドの真向否定。スーパーマンの『真実、正義、アメリカ流。それの何がおかしい(*作家ジョー・ケリー氏著名作)』と冷静かつ厳格に水を浴びせる。スーパーマンはマーベルのキャップと同じく存在自体が真正で不変不動。変わり行く時代に変わることを拒否する。彼が変わるんじゃない、世界が学んで彼のように変わるんだ」

ヴェノム誌画家ライアン・ステグマン「彼こそが指針」


【キングダム・カム】

共同脚本作家マーク・ウェイド氏「俺たちが大嫌いなモダンヒーローデザイン全部詰め込んだ外見にして」

画&作アレックス・ロス氏「マークが作ったマゴッグは『できる限り史上最悪に酷い、ロブ・ライフェルド的なデザイン』をひねり出せと言われたキャラ。そこでロブのケーブルのデザインから二つだけ盗んだ、大嫌いな所。傷、片目、腕、しかも何あの銃塗れ―もう手当たり次第にぶち込みましたって感じで。でもシャッタースターとやらの兜を金の羊の角にしてつけたら途端に連載で最大級に満足したデザインになった」


●マゴッグ

ゴグとマゴッグ聖書引用。

●黄金の羊の角

民衆が奉る偶像崇拝の対象=偽の神、神への冒涜的存在。

これも聖書引用。


90年代アンチヒーロー終焉の預言書でもあり、預言通り96年ロブ・ライフェルド氏のヒーローズ・リボーンがコケて、「最悪のコミック画家」で検索するとデッサン狂ってるとファンに貶されてるライフェルド氏の「キャップの雄っぱい」が出る結果に…。